“ゼロ”そして“黒の騎士団”。元日本、エリア11で一年前に起こった、日本人達=イレブン達による決起、ブラックリベリオン。その騒動は、中華連邦をも一時期動かそうと言う勢いのものだった。だが、“ゼロ”と言う頭を落とされた彼らの中のある者はブリタニアに捕まり、ある者は亡命し、ある者はその身を隠したと言う。 もしもその復活があったならば、中華連邦はどう動くべきか。そして、中華連邦を治める天子様に仕える己が、どのように見定めるべきか………大宦官に牛耳られてしまった中華連邦を、どのようにしてブリタニアに屈することのない国にすべきか。 だからこそ、神聖ブリタニア帝国へ無策とも言える決起をいった“ゼロ”と言う存在に、興味を持った。 ただの馬鹿か、それとも……… “ゼロ”の復活。“黒の騎士団”の捕まった団員の処刑。めまぐるしく動くエリア11の情勢に、否応なく中華連邦も巻き込まれた。そして、その発端となってしまった人物を断罪した黎星刻はその足で、中華連邦の総領事館内を颯爽と歩いていた。 先刻、“黒の騎士団”の団員の処刑は失敗に終わり、解放された団員達が治外法権であるこの建物内へと逃げてきた。現在実質的なこの建物内部の実権を握っているのは、混乱の中自らの上司である大宦官、高亥を殺害した星刻だった。 “ゼロ”本人も、現在はこの建物の内部にとどまっている。 見極めるべきだと、思った。 利用できるのか、それとも今ここで切り捨てるべきなのか。 “黒の騎士団”に使わせている部屋は幾つかあるが、C.C.と名乗った少女と、紅蓮弐式のパイロットである紅月カレンが使用している部屋に、“ゼロ”はいるはずだった。 その部屋の扉の前に立ち、不躾にも扉を叩かず、音を立てずに開き、するりと、猫の子が滑り込むように、室内へと入り込む。視線を巡らせば、そこには人の姿はなかった。C.C.とカレンの姿も、だ。もしかすると、解放された団員達と共にいるのかもしれなかった。 ならば好都合と、部屋の中を横切る。この際に、調べられる事を調べておく必要がある、と。 ふと、水の流れる音を耳にし、視線を転ずれば、シャワールームの方から、水の音がした。 まさかと、気配を殺して近づき、扉を開く。 脱衣所に、特徴的な形をした黒い仮面、裏地が赤の黒いマントと衣装………それは、“ゼロ”の衣服だった。 ならば、今ここにいるのは“ゼロ”本人。これは、その正体を暴く絶好の機会だった。 一体、どんな人間が、どんな素顔が、仮面の下に隠されているのか……… 静かに扉に左手をかけ、右手で剣を抜き、扉を開いた。そして、そのまま剣先を向ける。 「“ゼロ”だな?」 首筋に剣先を向け、逃げられないようにする。 振り返った姿に、星刻は、愕然とした。 「………“ゼロ”か?」 「そうだが?」 白い湯気の立ち上る中に立っている姿。短い黒い髪、紫色の瞳、白い肌、そして………小ぶりだが、柔らかく盛り上がった二つの胸。 「女!?」 「不躾な奴だな。俺が男に見えるか?」 腰に手を当てて仁王立ちするのは、確かに少女と呼んでいい年齢の者で、急いで剣を収めて扉を閉める。 「す、すまない!」 “ゼロ”は男だと、思い込んでいた。細い体にフィットしたあの格好は明らかに男の格好だったし、胸など微塵もなかった。声も低く、男の声だった。 だが、今聞いた少女の声は男の声に近い、低い声だった。意識して威厳を保つように低い声を出せば、あの“ゼロ”の声になるだろう。 「おい」 がちゃりと扉が背後で開き、湯気が流れ出す。 「そこにいると、服が取れないんだが」 濡れた黒い髪をかきあげながら、星刻を見上げてくる濡れた瞳に、どきりとして、思わず目をそらし、体をずらす。 「全く………何を考えている、貴様?」 「見極めねばと、思っただけだ。“ゼロ”を」 臆した様子もなく、恥ずかしげな様子も見せない少女は、手早く下着を身につけ、シャツを羽織った。早く下も履いてくれと思うが、わざとなのか、嫌がらせなのか、白いシャツの裾から覗く長く白い足が、艶かしい。 眺めてしまった視線を逸らし、星刻は一つ咳払いをした。 「女性の入浴を覗いたことは素直に謝ろう。てっきり“ゼロ”は男だと思っていた」 「それで?見極めて、どうするつもりだった?俺をここで殺すか?それとも利用するつもりか?」 「そう、だな………」 「何だ?女と分かったら、手加減でもするのか?」 人の悪そうな笑みを口元に刷くその様子は、確かに“ゼロ”のようだった。 「利用、させてもらおうと思う」 「そうか。なら、俺もお前達を利用させてもらおう」 「私に正体を知られて、殺さないのか?」 「お前は、利用できそうだからな。俺は、利用できる人間は散々に利用してから、捨てるつもりだ」 「随分と………」 「傲慢、か?」 「分かっているのか」 「これも、俺の中に流れている血のせいかな」 「血?」 「お前には、関係ないことだ」 タオルを掴み、頭に載せ、そのまま強く擦るようにして濡れた髪を拭き出した“ゼロ”に驚き、星刻は手を伸ばした。 「そんな風にしては、髪が痛むだろう?」 「俺は女じゃない。男として生きてるんだ。そんなことを気にはしない」 「男として?だとしても、乱暴すぎる」 それでは髪だけでなく、地肌も傷つけるだろうと、タオルを掴んで拭いてやる。 「おい」 嫌そうに顔を顰める“ゼロ”の頭を拭きながら、星刻は不思議に思った。 殺す勢いでここへ来たのに、もうそんな殺気も思いも、完全に消えうせてしまった。引きつけるような何か、魅力とでも呼べるようなものが、この少女にはある。 「私は、貴女に興味がある。本名を、教えてはくれないか?」 「聞いてどうする?俺の側につくか?」 「しばらくは、それでもいいだろう。中華連邦は決して、ブリタニアに膝を屈する気はないからな」 「ほう?面白いな。自らの上司を殺したお前の、その血に濡れた手が何を成せるか………お前の名前は?」 「黎星刻」 「ルルーシュだ」 「ルルーシュ」 軽やかに浸透するその響きは、凛とした少女の雰囲気と、強い意思の宿った瞳に、よく似合っていた。 これが、黎星刻とルルーシュとの出会いだった。 ![]() しょくしん、しきしん、いろごころ、タイトルの読みはこれで全てです。意味も、この読みで全部を込めてつけてみました。 星刻と女体化ルルが楽しすぎます。 下手すると、続く可能性が…ありますよ。 ギャグっぽくなってますけど……… 星刻はきっとあの長い黒髪なので、髪には並々ならぬ情熱を傾けているのだと信じて疑ってません。 ので、髪を粗雑に扱うルルに手を出してしまう、と。 星刻相手だと、女体化ルルは姉御な感じでお願いします。(誰に向かって言ってるんだ) 2008/4/28初出 |