*ひそかな恋*


 慕い、求め、想い、焦れ、愛す。
 それが、恋。


 この体、この心、全て天子様へ捧げると、固く誓ったはずだった。けれど、その誓いが、信念が、揺らぐ音がする。
 一体、これは何の音か。何が起きている音なのか。
 聞いてはいけないと、知ってはいけないと、どこかで囁く自分がいる。それが、罪であると、その自分は知っている。
 けれど、とまらない想いは、どうすればいいのだろうか。
 内側へと向いていた意識が、引き戻される。一段も、二段も高いその場所で、用意された宣言文を読み上げる、中華連邦の象徴と言われた天子の姿は、“ゼロ”に浚われる以前とは違い、少しばかりだが、為政者としての自覚が現れているように、星刻には思えた。
 外の世界へ行きたいと、望んでいたその瞳が見たのは、争うばかりの世界。民を虐げ軽んじる大宦官達や敵国の思惑、自分の声が届かない事の虚しさ、悲しさ。
 それは、偽りだけで構成された美しい世界に生きていた天子にとっては、まさしく転機であり、国を考え、民を思うきっかけとなったはずだった。
 そのことを、星刻は好ましく思う。そして、慕わしい、とも。けれど、以前ほどの情熱がないのは、どうしたことか。
 灼かれるほどの熱情が、あったはずだ。大宦官達への憎悪、民への憂い、天子様への憐察。
 それが、ない。消えて、しまった。どこかへと。まるで、初めからなかったかのように。残り火すら、ない。
 頭を下げながら、次々に広間から退室していく軍人、役人達。それを見送りながら、星刻も足を扉へと向ける。
 体は、確かに、ここにある。けれど、心が、ここにない。
 秘めるも、恋。隠すも、恋。
 決して誰にも話さず、漏らさず、ただ心の中で、想い続ける。強く、強く、もう一度、会えるように、と。もう一度、触れられるように、と。
 再び出会えたら、君は私を受け入れてくれるだろうか。もう一度、その声で名前を呼んでくれるだろうか。
 君だけに、話したことがある。君だけに、聞いて欲しい言葉がある。
 ………私は、ルルーシュ、君を………








四日間連続更新、第二弾、星刻→ルルです。
タイトルは6/28の誕生花、“シモツケソウ”の花言葉です。
密かな恋、秘そかな恋、どちらもこめて平仮名にしてます。
ルルでも、女体化ルルが相手でもどちらもいけそうですね、この書き方だと。
お好きなイメージをつけて読んでください。
天子の眼前にいてもルルを思う星刻。萌えます!!




2008/6/28初出