*変わらぬ愛らしさ*


 盤上の、手。
 見慣れたそれに、表情には出さず、内心で笑む。
 ああ、変わらないね。
 君は、本当に。
 大切な、私のルルーシュ。


 黒い手袋に包まれた細い指先が、黒い駒を掴み、後退させる。それを見て、ああ、やはり………と、確信を抱いた。瞬間、胸の中を駆け巡った衝動を、必死に押さえ込んだ。
 知っているのは、私だけでいい。他の誰があの子を知らなくとも、私が知っていれば。
 声に乗せてその名前を呟く事が出来なくても、幾度も、幾度も心の中で呼びかける。
 今、君は何をしているのだろうか。
 私は、今でも君を、確かに愛しいと、そう思っているよ。それを、直接伝えられたのなら、どれだけいいだろうか。
 君が私の敵になり、私に刃を、牙を剥くほどの存在になったことを、けれど私は少しも悲しんではいない。むしろ、昂揚している。
 君が、私と同じ位置から物事を見ているのだと、そのことに気がついたから。
 早く、君に会いたい。会って、昔のように抱きしめてやりたいよ。頭を撫でて、背を撫でて、甘やかしてあげたい。
 そして、あの頃のように、私に微笑んでおくれ。
 花と緑に囲まれた、あのアリエスの離宮の中で、私に微笑みかけてくれた、あの時と変わることのない笑顔で。
 あの時の愛らしさが、決して失われていないと、私は信じているよ、ルルーシュ。
 たとえ、お前のその手が、漆黒の罪と深紅の血に汚れていようとも。








四日間連続更新、第三弾、シュナ→ルルです。
タイトルは6/29の誕生花、“ヒメユリ”の花言葉です。
もうこれは言葉を見た瞬間、シュナルルだ!と思いました。
シュナ様はルルがどんな風になっていようと、可愛いな、愛らしいな、と思うはずです!!
そんなシュナルルが好きです。




2008/6/29初出