*星の夜*


 伸ばしても届かない、この腕は。
 どうすれば、貴方に触れられるのでしょうか。


 薄い、玻璃。
 叩けば、砕けてしまいそうな、程の。
 けれど、決して砕けはせぬ、玻璃。
 それは、神の意思。
 それは、天帝の怒り。
 その玻璃に、そっと手を当てる。
 祈るように。
 願うように。
 一年に一度の、逢瀬を夢見て。
 どこまで行っても。
 どこへ行こうとも。
 必ず現れる、薄い、玻璃。
 二人を隔てる、永久(とこしえ)の壁。
 側に、いるのに。
 手を伸ばせば、届くようにも思うのに。
 指先が触れるのは、冷たい玻璃面。
 温かい貴方の手が。
 優しい貴方の声が。
 遠い。
 貴方の長い黒髪に。
 貴方の清い指先に。
 触れたい。
 名前を、呼んで欲しい。
 そして、きっと囁いて。
 愛を。


 白い羽が。
 しとどに濡れる。
 飛べない鳥が。
 涙にその黒瞳を濡らす。
 降り止まぬ雨が。
 また、今年も二人を隔てる。
 壁が、消えた、唯一の日。
 冷えた玻璃のない、温かい日。
 こんなにも、心が冷たい。
 届かぬことを知りながら。
 腕を、伸ばす。
 必死に。
 必死に。
「星刻」
「ルルーシュ」
 風だけが。
 雨の中に、緩やかに吹く。
 声音だけでも。
 せめて、届けと。
 互いの名を、呼ぶ、悲しい声が。
 この、夕べに。
 七夕(しちせき)の、見えぬ星の、間に。








牽牛と織女に二人をあてはめてみました。
玻璃、と言うのは、ギアスOPの歌詞から。
隔てているんです、二人を一年間。
で、一年に一度会えるのに、また雨が降ってしまって…
七夕は、しちせき、とも読むそうで。そちらが可愛いかな、と思いまして最後に。
一部を抜粋して一節加えたものを、詩の部屋にもアップしてます。是非。(宣伝)




2008/7/7初出