*白い鳥の見る夢*


 この国には、七夕って言う行事があるんだね。
 僕、調べたんだよ。
 一年に一度、天の川を挟んで離れ離れになっている恋人、牽牛と織女が会える日なんだよね。
 でも、雨が降ると天の川が増水して、渡れなくなる。そうすると、どこからか白い鳥が飛んできて、橋渡しをしてくれるんでしょう?
 でもね、僕、不思議なんだ。
 白い鳥は、何の見返りもなしに、そんなことをしたのかな?それとも何か、理由があったのかな?
 って。そんな風な考えをしちゃうんだ。
 ねえ。兄さんは、どう思う?


 疲れたように眠る、白い顔。頬にかかる黒い髪を少しどけてやれば、首が動く。眼を覚ますのかと、体を硬くして待つが、起きる気配はない。
 相当、疲れているのだろう。今は影武者を使っているとは言え、二重生活は変わっていないわけで、疲労は蓄積しているはずだ。
 ―僕は、貴方に、何が出来るだろう。いつも、それを考えている。けれど、僕に出来るのは、人を殺す事だけ。それはやめろと、貴方は言うけれど、僕にはそれしかないんだ。貴方の役に立てる、何か、は。
 今日は、雨。
 そう。白い鳥の、出番。
 雨が降り、川が増水し、恋人は出会えない。
 哀れに思った白い鳥は、二人を会わせてあげようと、自分の翼が濡れて重くなるのも厭わずに、その羽を広げる。
 ねえ、兄さん。
 願いが叶うと言うこの日に、僕は願い事をしたんだ。
 貴方と、ずっと、一緒にいたいです、って。
 でも、叶うわけがないことを、僕は知っている。
 だって、きっと貴方は、本当の家族が帰ってきたら、僕を捨てるだろうから。
 ニセモノの僕は、いらなくなるのだろうから。
 だからね。考えたんだ。
 僕は、白い鳥になるよ。
 そうして、貴方を背中に乗せて、飛び立つんだ。
 誰にも、会わせてあげない。恋人にも、家族にも、勿論。
 僕は、貴方を乗せて、どこまでも遠く、遠くへ飛び立つ。僕達しかいない、場所へ。
 きっと、天の川に現れる白い鳥も、それを考えていたんだと思うよ。
 牽牛へ会わせるふりをして織女を背へと乗せ、そのまま飛び去ってしまうことを、企んでいたんだよ。
 けれど、羽が重くて、飛び立てなかった。二人は結局、鳥のおかげで会うことが出来てしまう。
 それでも、その日雨が降るたびに、今年こそ、今度こそ、と思うんだ。
 ねえ、兄さん。
 貴方は、僕と一緒に、遠くへ行ってくれる?








七夕小説、ロロルルバージョンです。
白い鳥、って言うか、考えが黒いです、ロロ。
もうこの子、浚う気満々ですよ、お姫様を。
白い鳥、と表現したのは、色々な説を聞いたことがあるからです。
鷺とか、白鳥だとか、色々。限定したくなかったので。
常にルルーシュが織女なのは、彼が受だからです。




2008/7/7初出