あの夏の日、僕らは出会った。 あの日から、随分と遠くへ、来てしまった。 後悔をしていないと言うのは嘘になる。けれど、今、こうして君を守るために戦えていると言うことは、僕にとって、喜び以外のなにものでもない。 元ナイトオブスリー、ジノ・ヴァインベルグの操るKMFトリスタン、そして黒の騎士団紅月カレンの操るKMF紅蓮。どちらも厄介な相手だと、半身を失ったトリスタンはまだしも、今の所無傷に見受けられる紅蓮を見て、スザクは舌打ちした。 『ここで、決着を!』 オープンになったチャンネルから流れてくる声。カレンか、と思っていると、映像が開いた。映像を繋げたまま戦闘するつもりかと、しかし、スザクは微笑んだ。 『何、笑ってるのよ!』 『スザク、お前…』 「君達は、何故一緒にいるんだい?」 『あんたを倒す、と言う目的があるからよ!』 「そう」 冷ややかに画面を見下ろすようにして、笑みを消す。 「僕を倒し、ルルーシュを倒し、その後の世界に君達は何を望むんだ?」 『その後の世界?』 『いきなり、何の話よ!』 「君達だって、明日を想像したことくらいあるだろう?ここで僕とルルーシュが倒れて、明日はどうなると思う?」 『合衆国が世界を導くわ!世界は平和になるの!!』 「本当に?」 『何?』 二人の台詞が重なり、訝しむように眉根が寄る。 「本当に平和になるのかな?フレイヤを背に戦った君達を、世界が認めてくれると思ってる?」 『あんた………』 「発射されたフレイヤを止めたのは、僕とルルーシュだ。君達は知っているかな?ブリタニアの首都、ペンドラゴンは壊滅した。フレイヤによってね。誰一人、避難することなく。君の家族もそこに住んでいたんじゃないのかな、ジノ」 『そ、んな………避難はさせたと、シュナイゼル殿下は!』 「僕達は各合衆国の代表をアヴァロンに乗せた。アッシュフォードで、君達は各代表を保護するより僕達の追撃を選んだね。そして今も、アヴァロンを落とそうとした。彼らの命などどうでもいいのかな?」 『そんなこと………』 「僕を倒す、ルルーシュを倒す。それはいいよ。したければすればいい。けど、僕達が倒れた後、君達はそれを公表せずに世界を動かすのかな?」 沈黙してしまった二人に、冷笑を浴びせる。 「それじゃあ、ゼロと、ルルーシュと何も変わらないね。嘘で世界を騙すんだから」 『そんな………私達は、そんなこと………』 『スザク、お前、私達にどうしろと!』 ジノの問いに、いっそ慈愛にも似た酷薄な笑顔を、スザクは見せた。 「ここで、死ねばいいと思うよ。そうすれば、この先の責任も、向けられる恨みも悪意も、背負わずにすむんだからさ」 それぞれの機体へ、剣先と銃口を向ける。 「ルルーシュの障害になるものは、僕が全て排除する!」 叫び、スザクは二機へと攻撃を浴びせた。 敵を屠ること。それこそが、剣の役割。 君を守る。そして、僕達は未来を、明日を手に入れる。 自分自身を偽ってきた僕達だからこそ、それを望んだ。 嘘偽りのない、自分自身を生きられる、明日を。 僕は、生きたい。 この先を。 君と。 ルルーシュ。 ![]() ドエスなスザクを書こうと思い立って書きました。 ルルーシュ以外にはとんでもなく酷いスザク、みたいな話を書きたくて… 各合衆国の代表がアヴァロンに人質になったのって…黒の騎士団は助けなかったのかな?って。 カレンはアッシュフォードにいたわけで、団員だって護衛みたいな形でアッシュフォードに何人かいたのに。 避難誘導みたいなことしなかったのかしら、って純粋に思ったので。 ドエススザクは難しいです。うん。難しい。 2008/9/22初出 |