悪逆皇帝と呼ばれた、神聖ブリタニア帝国第九九代皇帝、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアを殺し、世界を悪意の中から救い出した英雄、ゼロ。 仮面を被り続けるその姿は、常に姿を現せば人々から賞賛を浴び、メディアの前に登場すれば、焚かれるフラッシュがやむ事はない。 しかし、その仮面の下の素顔は、誰も、知らない。 完璧なセキュリティに守られた、ゼロの部屋。そこから外へ出る時には必ずマントをつけ、仮面を被る。どんな場所に招待されても、それは変わることがなかった。 ゼロが居住している場所は人に知られることはなく、要請があれば常にそこから、望まれる場所へ行く。 自らの住まいへと戻り、自室へと引き取って、仮面とマントを外し、大きく息を吐き出す。 着慣れた衣装を脱いで、ラフな格好に着替えようとしているそこへと、足音が聞こえた。 「おかえり、スザク」 にっこりと微笑む、紫色の両眼。 「ただいま、ルルーシュ」 振り返って微笑めば、幼い笑顔が向けられた。 公衆の面前で胸を刺し貫かれ、人々の悪意を一身に背負って命を落とした、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア。皇帝と言う地位にはあったが、あまりにその悪逆振りが眼についたと言うことで、大々的な葬儀は行われなかった。 ひっそりと火葬された、棺。だが、その棺の中は、空だった。本来そこに入っているべきだった遺骸は、ルルーシュが管轄していたブリタニアの医療チームに送られていた。 最高峰の医師達が集うそこで、必死の蘇生を施されたルルーシュは、一命を取り留めた。 命は、取り留めた。だが、何も、覚えていなかった。自分が何者なのか、何をしたのか、何故そこにいるのか…名前すら、覚えていなかった。 心配停止の状態が長かったせいだろうと、そういわれた。本来であれば、彼自身がきちんと、蘇生するはずだった。悪逆皇帝と呼ばれた、しかし世界の悪意を自らへ全て集めるためにそのような行為を繰り返した、優しい彼が。 悲しむべきことだった。だが、それ以上に、スザクの心は歓喜に満たされた。 手に、入らないと思っていたのだ。殺すことでしか、彼の心を手に入れられない、と。 けれど、今の彼にとっては、初めて顔を合わせたスザクが、全てだった。 まるで、雛に刷り込みをしていくように、スザクはルルーシュに優しくした。自分を信じるように、愛するように、と。 酷い支配欲だと、独占欲だとわかっていた。それでも、止められなかった。 「今日の夕食はサーモンだ。昔の俺は得意だったんだろう?」 「そうだよ。料理も、掃除も、家事は皆ね」 「はい」 暖かい湯気の立ち上る、料理。食卓に並べられたそれに、スザクは箸をつける。 「うん。美味しいよ」 「良かった!」 にこにことよく笑う今のルルーシュの心は、子供だった。生まれて間もない子供のように純粋で、柔らかかった。 「食後にデザートを作ったんだ。全部食べろよ」 「わかってるよ」 口調は、昔の彼と変わらない。けれど、端々に覗く仕草………たとえば、スザクを伺うように見るとか、考え込む時に指を口元へ持っていく、とか言うそれら………が、子供だった。 「くす。ルルーシュ、ついてるよ」 「え?どこ?」 慌てたようにあげられる手を制して、顔を近づける。 「うひゃ!?」 ぺろりと、ご飯粒のついた頬を舐めてやると、真っ赤になったルルーシュが、スザクの顔を押しのける。 「こういうのは駄目だと言った!」 「夜だけ?」 「夜だけだ!」 「わかったよ」 大人しく引いたスザクに安堵したのか、ルルーシュが食事を再開する。 その様子を見ながら、可愛いな、とスザクは想った。 枕に顔を押しつけるようにして、高く腰を上げ、シーツを掻く細い指。 「はぁっ…あっ…くる、しぃ」 「痛い?」 「やっ………いっ、ぱい」 白い肌に散る赤い痕。それを指先で一撫でして、細い腰を掴んで揺さぶる。 「ひあんっ!」 高い声が上がり、細い足がぶるぶると震える。 「気持ち、いい、よ、ルルーシュ」 「やっ、あっ…もぅ」 限界まで張り詰め、反りあがった欲望に手を添えて、上下に擦ってやる。 「あぁあああんっ!」 ぼたぼたと、シーツの上に零れる欲望。達した快楽で窄まる蕾の肉に締めつけられ、スザクも欲望をルルーシュの奥へと叩きつける。 「あっ………あつ、いぃ………いっぱい、あっ」 ずるりと音をさせて欲望を引き抜き、細い体を仰向けにして、赤い唇に口づける。 「好きだよ、ルルーシュ。愛してる」 「んっ………す、ざくぅ」 「もう、離さないから。ずっと、僕の側にいて」 「すざくも、離れないで」 縋るように伸ばされた腕が、スザクの背へと回ってしがみつく。 不安なのだと、知っている。今のルルーシュにとって、世界はスザクなのだから。 世界にルルーシュを奪われるなど、冗談じゃなかった。だからスザクは、奪い返したのだ。 たとえそれが、どんな形であっても。 ![]() ギアス最終回を受けて。 もうショックで、幸せラブラブえろえろな話でも書いてないと……… やってらんないんです!! スザルル愛の物語。それがルルの死で完結だなんて認めない!! そんな腐妄想の果てに出来上がりました。スルーしてください。 2008/9/28初出 |