白い手が執務机を叩く。 「一体これはどういうことだ、スザク!!」 「うん?」 「何故、ユフィやシャーリー、ロロや卜部まで、あんな場所に足を運んでいるんだ!!」 「それは、会談をするためだよ」 「私はそんなことを了承した覚えはない!」 素早くパネルに手を伸ばし、操作すると、マイクに向かって叫ぶ。 「お前達!そこで一体何してる!!」 怒声が会議室内に響いたと同時に、室内にあった通信パネルに顔が映る。 「あら。ルルーシュ」 『ユフィ!何してるんだ!』 「何って、会談ですわ。戦争を回避するための」 にこりと微笑んだユーフェミアに、ルルーシュが拳を握り締める。 『スザァク!何でお前が止めないんだ!』 『だって、勧めたの僕だもん』 『男が“だもん”とか使うな!C.C.!!』 『私に話題を振るな』 言いながら、ルルーシュの体が画面からどけられ、ピザを食しているC.C.が映る。 『おい、お前達。うまくいきそうなのか?』 「さあ、どうでしょう?でも、やらなければなりませんでしょう?ルルーシュを死なせないためには」 『っ…ユフィ!』 慌てたようなルルーシュが、C.C.の体を突き飛ばすようにして画面の前に現れる。 「嫌ですわよ、私達は。貴方を殺す片棒を担ぐなんて。ねぇ?」 「うん。絶対嫌!」 「まあ、嫌だなぁ。守るって決めた相手に死なれるのは」 「姉さんは僕が守るからね!」 『ロロ………何ていい子なんだ。早く帰っておいで』 「すぐに帰るよ!」 画面の向こう側、ルルーシュの後ろから腕が伸びてきて、細い体を抱きしめる。 『帰ってこなくていいよ。僕とルルーシュの時間を邪魔するんだからさ、すぐ』 「姉さんから離れてくれませんか?ナイトオブゼロ」 『嫌だよ』 「殺す。帰ったら即殺す」 『一度死んでギアスを失った君が、僕に勝てるわけないだろ?』 画面の向こう側とこちら側で繰り広げられる、皇帝の取り合いに、沈黙が横たわる。 『ユフィ』 「何ですか、スザク?」 『“ゼロレクイエム”を行わずにすむかどうかはこれにかかってるから、よろしくね』 「任せてくださいな、スザク」 『じゃあ、いい報告を期待してるよ』 『スザクっ!俺を無視して話を進めるな!』 ぶつりと、画面が暗くなる。通信が強制的に終了されたらしい。しかし、室内には、何とも言えない戸惑いと疑惑の空気が流れていた。 「シュナイゼルお兄様」 「何かな、ユーフェミア?」 「お兄様でしたら、私の話を聞いて、きっと納得してこちらへ来てくれると思いますの。お話、聞いていただけます?」 「………いいだろう。話してごらん」 一通りの話を聞き終えたシュナイゼルは、しばらく沈思黙考していたかと思うと、にこりと微笑んだ。 「いいよ、ユフィ。私はそちらへ回ろう」 「まあ。ありがとうございます」 「兄上!?」 「シュナイゼルお兄様!?」 立ち上がったシュナイゼルが、座ったままのコーネリアとナナリーに静かな笑顔を向けただけで、歩き始める。 「元々、私は皇帝の椅子に興味などない。世界から戦争がなくなるのであれば、どんな方法だって構わないのではないかな?」 「ですが…」 「コーネリア。確かに、ルルーシュは罪を犯しただろうね。多くの人を殺しただろう。だが、あの子をそうしてしまった原因は、私達ではないのかな?冷たく皇宮から追い出した、守らなかった私達の責任だろう?身分を偽り、性別すらも偽って、あの子は今まで生きてきたのだよ」 「それは………けれど………」 「それを、生きることで償わせる、と言う方法もあるだろう?」 シュナイゼルとは幾つか離れた席で、立ち上がった男がいた。 「ならば、私も騎士団を抜けよう」 「総司令!?」 立ち上がったのは、それまで成り行きを見守っていた、“黒の騎士団”総司令の黎星刻。一言も意見を言わなかった男が立ち上がったことに、誰もが驚いていた。 「私はそもそも、“ゼロ”に任命された総司令だ。その“ゼロ”がルルーシュ・ヴィ・ブリタニアであったのならば、当然その道についていくのが道理。君達が“ゼロ”を追い出した際のやり方に、私は承服しかねるのだ」 「だが、“ゼロ”は俺達を騙していたんだぞ!」 扇の言葉に、星刻が肩を落とす。 「全く嘘をつかず、騙さぬ人間など世の中にいるのか?“ゼロ”の起した奇跡と実績を、省みる事もしないのか?」 哀れみすらこめたかのような視線に、扇がたじろぐ。すると、それに呼応したかのように、壁際で手を上げる男。 「私もそちらへ行くよ、ユーフェミア様」 「あら。よろしいんですの?」 「ルルーシュ先輩には学校で何かと世話にもなったし、真実皇族だって言うのもわかったし………何より、死なせたくないしね」 苦笑するように、ジノが肩を竦める。すると、我が意を得たり、とでも言うようにユーフェミアが微笑んだ。 「それでは、いかが致しますか?我々と、世界の覇権を争いますか?超合衆国の皆様方」 たった数分でひっくり返った勢力図。状況を理解し切れていない、超合衆国の要人達。 ただ、自分達に勝ち目はないのだと、それだけは何とか、わかっていた。 ![]() 紗鳳寺のえる様リクエストの“スザルル(♀)でゼロレクイエムなし。星刻、シュナイゼル、ジノの気持ちベクトルがルル向き。扇ジャパン+ダモクレス組みに厳しめ。ロロ、ユフィ、シャーリー、卜部生存” という、てんこもりでございますぅ!! その設定に萌えて、全部詰め込みたいぃいい!!とか思ったら、長くなりました。あぁあ。 すみません、遅くなってしまいまして!遅すぎですよね! しかも何か尻切れトンボ的な…この後はもう、妄想と想像で好きに補ってください! あれです。この後は皆で皇帝争奪戦が繰り広げられるんですよ。大変ですよ。 そんな、総愛されルルです。これでゼロレクイエムは出来ませんので、ルル生存ルートですっ!! 2009/7/20初出 |