*死人花*


 無縁仏の
  そばに咲く
 赤い華は
  曼珠沙華
 死人花
  壊れた骸
 名もなきその血を
  吸い上げて
 華麗に咲き狂う

 土に還った
  愛しい人も
 顔をのぞかせ
  華を見る
 語る声も言葉も
  持たぬのに
 必死に開く
  漆黒の口

 呼ぶ声
  抱く腕
 触れた熱
  全ては幻
 夢現(ゆめうつつ)
  枯れた涙が
 華に落ち
  散っていく

 貴方の骸すら
  抱けずに
 私は籠の中
  消えていく













最初にこれを書いたのは、二十歳前。
[恋の歌]という授業のレポートでした。
学生が書くには少しどうかと思ったので…
提出したのは、無縁仏とかを削除した内容。
それでも同じゼミの子には“変”と言われました。
“怖い”とも言われましたね。そうでしょうか?
イメージは、身分違いの恋。時代は平安時代辺りで?
女性の身分の方が男性より高い設定で書きました。
そのために、愛した男性の骸を抱く事すら…という。
怖いですか?

2007/6/1初出