*星今宵*



 薄い、玻璃。
 叩けば、砕けてしまいそうな、程の。
 けれど、決して砕けはせぬ、玻璃。
 それは、神の意思。
 それは、天帝の怒り。
 その玻璃に、そっと手を当てる。
 祈るように。
 願うように。
 一年に一度の、逢瀬を夢見て。
 どこまで行っても。
 どこへ行こうとも。
 必ず現れる、薄い、玻璃。
 二人を隔てる、永久(とこしえ)の壁。
 側に、いるのに。
 手を伸ばせば、届くようにも思うのに。
 指先が触れるのは、冷たい玻璃面。
 温かい貴方の手が。
 優しい貴方の声が。
 遠い。
 貴方の長い黒髪に。
 貴方の清い指先に。
 触れたい。
 名前を、呼んで欲しい。
 そして、きっと囁いて。
 愛を。
 この、瞬く星の、今宵に。













2008年七夕。
二次創作コードギアス部屋に書いた話の中の一部ですが。
かなり個人的に気に入ったので、こちらにも。
最後に一節加えてあります。
少し、最後の一節で前向きになったかな、と。


2008/7/7初出